Page8 -「本物とは?」


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PDF 団長の独り言 2017.04.23

4月23日(日) 「本物とは?」

「荒立ち」も終わり、物語の輪郭が
浮かび上がってきた。

「荒立ち」というのは、シーンごとに
大まかな動きをつけていく立ち稽古のことで、
例えば、

「ここのシーンは『真壁』は下手のテーブル席に
座ってください」

「人形劇部員達は、上手奥の人形劇のステージから
顔を出して!」等、

ざっくり動きを決める作業のことだ。

その指示した動きを元に、
みんなに
とりあえず好きなように演じてもらうが・・・

なかなかイメージ通りにはいかない。

やっぱり、頭の中だけで動く登場人物と、
実際にメンバー達が動くのとは違いますわ。

最初のうちは、
極力イメージ通りの動き(芝居)を
つけていくけれど、
一向にイメージに近づかない場合は、

「何が何でもこうやるんだ!」
という演出の想いを役者に押し付けず、
演じるメンバーの個性に合わせて、
脚本をどんどんアレンジしていく。

もちろん、
明らかに全く別方向に進もうとしている
メンバーがいると、
そこは軌道修正をしてもらうべく
ダメを出すけれどね。

あとは
「基礎訓練しなきゃダメかなぁ?」と
思われるメンバーには、
芝居の稽古中だろうとも、
感情表現の訓練をしたり、
時に発声練習をしたりという、
いわゆる「演劇のレッスン」を
「稽古中」に行うこともあるのです。

まぁープロの団体や、稽古時間が極端に少ない団体、
あるいはプライド高きメンバーばかり集まる団体では、
本編の芝居とはまるで関係のない
「感情表現のエチュード」とか
「発声練習」を稽古中に行うなんてことは
ありえんでしょう。

でもいいのです!
最初は「あちゃー」って思うメンバーも、
こうした「レッスン」を組み込みながらの稽古で、
徐々にいい感じになり、公演が終わる頃には、
素晴らしい個性派俳優に成長するってのが
劇団ふぁんハウスなんだから。

ただそれも、
「熱意」と「やる気」が必要で、
そこに至るまでに、
本人が相当悔しい思いをして努力をして、
そして周りのメンバー達が、
時に自主稽古に付き合い、励ましフォローをして、
ようやくなし得るのです。

それからもう1つ、
よそ様の劇団の稽古と大きく違うのが、
荒立ちの段階から、アマティーによる
ピアノの生演奏が入るってところ。

今ではとっても当たり前の光景だけど、
実はこれってすごく贅沢なことなんですよ。

普通、演奏者がいる芝居の場合、
演奏者が稽古に合流するのって、
通し稽古くらいからなんだろうけど、

劇団ふぁんハウスでは、
読み合わせの段階からアマティーが
がっちり参加して、シーンごとに
ピアノの生演奏BGMを入れてくれるのです。

これは本当にありがたい。

その生演奏BGMなんだけど、
あるシーンのある場所で、
ある役者が長セリフを言う箇所にぴったりハマる、
「あるクラッシック曲」が、
突然!私の頭に降ってきたのです。
(すみません・・・「ある」ばかりで。)

そこで早速アマティーに
「あるクラッシック曲」をリクエストすると、
さすが音楽大学出身なだけに、
クラッシックならばお手の物!とばかりに、
「ある」曲を弾き始めたが・・・

私がイメージする弾き方ではなかったので、
楽譜も何も分からない私は、
音大でピアノを専攻した
クラッシックの専門家でもある
アマティーに対して、
偉そうに演奏方法のダメを出す。

一般的にクラッシックを学んだ人というのは、
楽譜通りに演奏するのがポピュラーなので、
音符も何もわからない素人が、
クラッシックの演奏方法をつべこべ言っても、

「でもこの曲はこうですからできません!」とか
「しかし、それだと楽譜通りじゃありません」
など主張して、
演奏方法は絶対に譲らないと、
以前、クラッシックの音楽家と芝居を作った
経験のある尊敬するプロの名優さんから
直接聞いたことがあったけれど、
アマティーはそんなことはない。

「その演奏だと
力が入りすぎて雑に聞こえる!」

「そこは3拍あけて!」

「もっと包みこむように!」

「大自然を意識して!」

「ラストは大きく!大きく!
希望を胸に前に進む感じでぇー」

と、まるで私は小澤征爾にでもなったかのごとく、
何様状態で指揮棒を振る動作をしながら
アマティーにダメを出すと、
彼女は「でも、しかし、だって」を言うことなく、
私のイメージに近づけようと
懸命に鍵盤上の指を走らせる。

そういえば、劇団ふぁんハウスの
スタッフ軍団の皆様もそうだね。

舞台監督の高橋さん、音響の野中君、
照明の土門さん、美術の三井さん、
みんな私の要求に対して
「でも、しかし、だって」は一切言わず、
どんな困難な要求も、「分かりました」と言って
サラリとやってのけてくれる。

「出来ない理由」を探すのは簡単だけど、
限られた条件の中で、
何が何でも「出来る方法」を考え、
そしてやってのけるメンバーやスタッフに
恵まれているからこそ、劇団ふぁんハウスは、
これまで活動を続けてこられたんだよなぁーと、
しみじみ思う団長でありました。