Page24 –「場当たり」


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団長の独り言 2018.08.02-05 その2

「場当たり」

19時、場当たりが始まった。

場当たりというのは、
建ち上がったセットを使って、
実際の照明、音響を入れた状態で
舞台転換を行い、
問題点はないか?をみたり、

場面場面での照明、
音響のチェックもする作業の事で、
役者の立ち位置 等をキチンと決めるのも、
この場当たりで行う。

これまで稽古場では
「良し」としてきた動きなども、
実際のセットの中で実際の照明が当たると、
「あれ?」ってなる事もあり、
そういう箇所も、
細かくチェックしていくのだ。

幕開き、シーン1は問題なかったのだが、
シーン2からシーン3にかけて、
暗闇での転換(暗転)中に、
早速ハプニングが起きた。

鈴木千秋演じる「百合子」が
場面終わりのセリフ
「田舎に帰ってきてよかったぁ」と
言って暗転になり、
舞台上にいた役者達が暗い中退場している時、
舞台セットの奥で「ドスン!」という
物音がした。

客席の1番後ろに座って、
チェックしていた私は
「何かあったな!」と思った瞬間、

暗闇の中から睦子さんの
緊急事態を告げる

「すみません、
ちょっと止めてください!」

という声が響き渡る。

すぐ様、照明さんが明かりをつけると、

ある役者が舞台セットの奥に行った時、
足を滑らせて落っこちてしまっていた。

腰を打ったものの、
幸いにして大事には至らなかったけれど、
稽古場では考えられない事が
起こるのが実際の舞台ってもの。

対応策として、
舞台裏に小さな明かりを付け加えたが、
セットが建ち上がった時点で、
役者自身による確認作業も大切なのだと、
あらためて実感する出来事だった。

それでも転落事故って起こるから、

「舞台上には危険がいっぱい」

という認識でいなきゃいけない。

そのハプニングのあと、
暫く順調に場当たりは進んでいったのだが、
「監督」と「百合子」のシーンや、
「喫茶スコット」、「居酒屋門出」のシーンと、
舞台前で行うすべてのシーンの転換作業が、
多少手こずる。

まぁーここはね、予測はしていたけどね。

だって稽古場でうまくいっても、
実際のステージと稽古場では
環境も広さも明るさも、
何もかも全然違うわけで、

そんな中で大きなテーブルとか
椅子とか出して、
しかも決められた場所に
音もなく静かにセットを
出さなきゃいけないのだから、
不慣れな舞台スタッフ達が、
一発でうまくいくはずがない。

それでも舞台監督の高橋さんや、
私の経験から、

「稽古通りではダメ」
「じゃーどうすればいいか?」
を瞬時に考え、修正し、
二度ほどやり直せば、
スムーズに転換も出来るようになる。

あとは、
「20年前」「1年後」等のテロップを
出すタイミング を何度か確認して、
プロジェクター担当者の操作練習も行う。

このように、
稽古場では絶対に出来ない作業を
行うのが場当たりでして、

これらの作業を
キチンと確認しとかなければ、
とんでもない事になる。

だからどのスタッフさんも(私も)、
時間と戦いながら、真剣そのもの。

そんな劇団ふぁんハウスの
スタッフ軍団の方々は、
私の突然の要望に対しても、
「出来ません」「それは無理だねぇー」
とは絶対に言わない。

そこがプロなんだよねぇ。

中途半端な人に限って、
要望やダ メを出すと、
「出来ない理由」を羅列して、
「出来る理由」は探そうとしない。

それは役者でもそう。
ダメを出せば必ず眉間にシワを寄せて、
「でも・しかし・だって」を連発し、
演出家と議論するのが
役者の務めとばかりに、
貴重な稽古時間を無駄にする。

演出家の三谷幸喜さんが
言っていたけれど、

鹿賀丈史さんや市村正親さんを
演出した際、ダメを出しても、
三谷さんが恐縮するくらい、

「はい」とだけ言って、
「でも」「しかし」「だって」は、
一切言わなかったそうだ。

同じような事は、
山崎努さんもおっしゃっていたし、

私が名だたる名優の方と、
同じ現場でお仕事をさせていただいた時も、
演出や監督のダメ出しに、
いちいち意見を言う役者さんは見た事がない。

本当に出来る人は、
やって見せて、演出家を納得させるもの。

常にしかめっ面で演出家と議論して、
それで演出家を打ち負かそうとして、
一体、何になるんだろう・・・。

周りにいるみんなが
嫌な気持ちになるだけなのに。

あっ!すみません。
なんだか話が大きく脱線してしまった。

もちろん、
今回の劇団ふぁんハウスには
そんな役者もスタッフも一人もおりません。

緊張感は当然ながらあるものの、
それぞれがそれぞれを信頼し、
そして明るく楽しく、
みんなが「大人」な対応で、
嫌な空気には一切ならず進んでいくが

21時、退館時間となりタイムアウト。

続きは明日の初日の朝行い、
そしてゲネプロ(リハーサル)、
本番と、慌ただしくも
緊張する日を迎えるのでありました。