Page21 –「そして初日が始まる。」


『団長の独り言』PDFファイル(A4サイズ)
↓ こちらからダウンロードできます。
団長の独り言 2020.02.08-③

「そして初日が始まる。」

ゲネプロが始まった。
ゲネプロとは、役者は衣裳にメイク、
照明さん、音響さんも、
何もかも完全に本番と同じように行う
リハーサルの事。

まず客席が明るい状態で、
ボイス・エマノンさんの場内アナウンス。

さすがプロ中のプロ!
落ち着いたその声を聴くと
「いよいよ始まる!」って身が引き締まる。

暫くすると、
アマティアズのピアノ演奏によるオープニング曲。
徐々に場内が暗くなって、ゆっくりと緞帳幕が上がる。

すると「ホテル春琴閣」が、
色とりどりの照明に照らされて現れて、
ピアノの曲終わりと同時に、
舞台が一旦暗くなり、
今度はジュヨン君が映し出す映像の中、
岡部君の篠笛が物悲しげに響き渡る・・・。

とてもオーソドックスな幕開きの方法で、
物語がスタートするのも、
劇団ふぁんハウスならでは。

ただ今時、緞帳幕をつかって、
こんな古典的な幕開きを行うお芝居って、
ほとんどないかもね。

歌舞伎とか、明治座とか新橋演舞場で
行う商業演劇なら、
緞帳幕を使っての開演はあるだろうけれど、
色々な団体のお芝居を観に行くけれど、
緞帳幕を使う芝居って、観ないよなぁ・・・。

でもいいのです。
偉大なるワンパターンが
劇団ふぁんハウスの味でもあるのだから。

私はこういうお芝居らしい
お芝居の始まり方が好きなのだから。
このスタイルで21年間やってきたのだから。

こうして始まったゲネプロを、
私は客席の一番後ろでしっかりチェックをして、
最終確認を行い、細かな照明のタイミングや
音響のレベル、あとは舞台スタッフの転換の
タイミング等ダメを出し、
あとは本番を迎えるばかりとなる。

時計に目をやれば16時45分。
開演の1時間45分前だ。

これは正に、
高橋さんの沈着冷静な仕切りと、
各スタッフさん達の頑張りの賜物。

おかげ様で、とてもゆとりを持ち、
本番の準備に取り掛かることが出来た。

ただ・・・私の喉の調子が、
ゲネを終わった時点でも一向に良くならない…。

声は出るには出るんだけどね、
なんかねぇー出し辛いんだよね。

喉ぬーるスプレーを頻繁にかけ、
のど飴を舐めまくり、水で喉を潤し・・・。
あとは楽屋では極力声を出さないようにしていた。

しかし初日直前、
私の下には色々な人達が相談、報告で
「団長、ちょっといいですか?」
と尋ねてくるので、
全然しゃべらないわけにもいかない。
だから蚊の鳴くような小さな声で対応し、
喉を温存していたけれど、
受付サブリーダーの恒士郎が

「ぼちぼち、受付スタッフさんへの
挨拶をお願いします」

と言いに来たので、
そこは、蚊の鳴くような声でのご挨拶
ってなわけにはいかない。

「よし!」と気合を入れ、
出演者全員でロビーに行くと、

「初めまして」の方や、
「いつもありがとうございます」の方、
そして「おおお!お久しぶりです」という方達が、
各セクションに分かれて準備作業を行っていた。

その中で、陣頭指揮をとっていた
三尾リーダーと目が合うと、

「皆さん、ちょっと集合して下さい」

と三尾さんが全員声を掛けてくれて、
皆さんと役者陣が向い合せでの集合。

劇団ふぁんハウスの公演は、
様々な障害のあるお客様が
大勢お越しになるので、

そのお客様への対応として、
毎回数十名ものボランティアスタッフさんが
来て下さるのだが、皆さんのおかげで、
「バリアフリー観劇」というものが出来るわけで、
毎回感謝の気持ちでいっぱいになる。

受付スタッフの皆さんへの
詳細な業務内容や注意事項は、
三尾リーダーが
ご説明させていただいているはずなので、
私から皆さんにお願いする事は一つ。

「笑顔でお客様をお迎えしてください」

って事。

その「お願い」を元気にお伝えしていると、
「あれ?喉の調子が戻っている?絶好調だ!」
受付スタッフさんの笑顔が、私にパワーを
下さったのかもしれないね。

特に「初めまして」の皆さんは、
どことなく緊張されているようなので、
その緊張を解す意味と、
出演者・スタッフさんの気持ちをひとつにする
意味合いも込めて、

毎回恒例となっているアントニオ猪木の定番である
「1、2、3、ダァ〜」を竹内の兄貴が音頭を取り、

全員で拳を天に突き上げ、
そして、みんなで拍手をすると、

受付ロビーは笑顔でいっぱいになり、
みんなの気持ちがひとつになった感じがした。

我々は楽屋に戻り、しばしの間、
緊張を解すためにくつろいでいると、

「開場しましたぁ」
という舞台監督の高橋さんの声が響き渡る。

楽屋のテレビモニターに目をやると、
お客様が続々と入ってこられる。

「もうやるしかない!」

この瞬間から、
緊張で胸が張り裂けそうになるのも毎度の事。

本番5分前、
関係者全員幕の下りている舞台の中に集合し、
円陣を組んで両手を前に出し、
「いくぞー!」「おー!」と小声で気合を入れ、
それぞれの位置へとスタンバイし、
開演を息を呑んで待つのでした。