7月19日(金)

初日の朝8時、今日もいい天気!

笑顔一杯のメンバーが、
続々と劇場近くの神社へ集まってくる。

劇団ふぁんハウスでは、
設立以来初日の朝は、必ず「成功祈願」を
劇場近くの神社でおこなっているのだが、

今回は初めての劇場なので、
初めての神社でのお参りとなる。

聞くところによればここの神社は、
「芸能の神様」だそうで、
そういえば歴史ある神社にしては
比較的新しい鳥居の裏側に、

「寄贈・榎本健一」

なる文字があった。

日本を代表する喜劇役者・エノケンこと
榎本健一さんにゆかりの深い神社ってことで、
我々は喜劇をおこなうわけじゃないけれど、
やはりテンションは高まる。

いつものように三田秀の
素晴らしい大声での祝詞のあと、
御社に深く頭を垂れる。

私の祈りは、

「みんなが怪我をしませんように」

「お客様が喜んで下さるように」

そして

「大成功しますように」

だ。

他のメンバーは、
どんなことをお祈りしているのかな?
なかには、

「セリフをトチる事のないように」

なんてことをお祈りしているメンバーも
いるかもしれないね。

そんなことを思いながら、
神社から徒歩7分程の劇場へ。

まずは30分程、各スタッフさんの
直し作業等おこない、
それから舞台監督の高橋さんと
打ち合わせをして、
昨日の場当たりの続きから。

今回は、さほど大きな
舞台セットの場面転換はないけれど、
それでも慎重におこなうに越した事はない。

かといって、あまり時間を掛け過ぎると、
ゲネプロの時間がなくなってしまう・・・

もちろん、そんな事は重々承知の高橋さん、
鮮やかな采配で、場当たりを進めていくと、
「ドライアイス」のシーンとなる。

この「ドライアイス使用」、
実は

「上手くいくかどうか分からない」

というのが正直なところだった。

予算的に余裕があれば、
すごいドライアイスマシーンを導入して、
「どばぁー!」ってやれるのだが、
何せ低予算の中での特殊効果。

そこで、我らの「ドライアイスマシーン」は、
高橋さんが、普通のバケツの横っ腹に
普通のパイプを差し込み、
ドライアイスを入れるアルミのカゴがぶら下がっている
蓋をするだけの非常にシンプルなマシーンを
作って来てくれた。

「これ?大丈夫?」

と、高橋さんには失礼だが、
マシーンを最初に見た時はそう思ったけれど、
そのマシーン!すごい威力を発揮した!

まずバケツに熱湯を入れ、
その中へアルミのカゴに入った
ドライアイスを入れると、

すげー!!

モクモクと白い煙が勢いよくバケツの横に
差し込まれた筒から吹き出してくるじゃないの!

それから、
出てきた煙をちえちゃん(金城ちえ)が、
うちわでせっせ、せっせと仰いで舞台上に流し、
煙に照明を当てて、効果音を入れ、
舞台全体の明かりもブルーっぽくしてもらった
効果を客席から見ると、

とてもとても、
あんな原始的な方法でドライアイスを
炊いているとは思えないほど素晴らしい!

さすが高橋さん!
出演者も客席から
「ドライアイス実験」を眺めて大興奮!

ということで、実験は大成功したので、
ドライアイスは採用することにして、
場当たりを進めていくと、
特に大きな問題もなかったので、
休憩後、ゲネプロを開始する。

ゲネプロというのは、
いわばリハーサルのことなのだけど、

うーん・・・
リハーサルよりも、重い?というか、
照明も音響も、舞台転換も、
そして役者の芝居もまったく本番通りおこなうから、
ミスがあろうがどうしようが続けなきゃいけないし、
何よりこのゲネプロというのは、
これまでの集大成みたいなもので、
ゲネプロでちゃんといかなきゃ
本番の幕も上げられないってくらい、
真剣勝負なので、ピリピリ感たるやすごい!

それでも、ゲネプロは順調に進み、
いよいよ物語が終盤へ差し掛かった時、
私演じる「源太」が、しみじみと「亡き義父」との
想い出を語るセリフで、自分の本当の父親の事を
思い出してしまい、感情のコントロールができなくなって
セリフが言えず、あろうことか芝居を止めてしまった!

こんなことは稽古中はもちろん、
役者人生の中でも初めて。

確かに、自分の人生体験の感情を借りて、
役の人物の感情を出す方法ってのも、
演じる際は「有り」だし、ストーリー的にも、
「義父」と同居していた「源太」が「義父」を思い出し、
涙ぐむってのもおかしかないけれど、

芝居を止めてしまうというのは、
役者としては一番やっちゃーいけない事。

どんなに感情が昂っても、
キチンと芝居を続けなきゃ
お芝居は成立しなくなるからね・・・。

ただ「亡き父」の事を思い出し、
我を忘れて涙を流してしまう事で、
なんだか気持ちがすっきりしたので、
役者としては反省したけれど、
個人的には、父の事を強烈に思い出す事ができて、
まるで親父の声が聞こえたようで嬉しかった。

まぁーいずれにしても、
「ゲネプロで良かったー」ってところだね。

そんなことを思いながらゲネプロを終え、
明るくなった客席に目をやれば、
遺影の中で笑っている親父と
目が合ったのでした。

つづく。