Page28 – 「ありがとう、お父さん・最終回」


「走り続ける劇団ふぁんハウス!」

初日の幕が上がり、
役者達はすごく落ち着いていて、
セリフのトチリもなく、
怖いくらい順調に芝居が進んでいた。

開始してから、1時間くらい経っただろうか?
「納棺の儀」を終え、
皆、寛いでいる場面での事。

広瀬さん(広瀬慎一)演じる
「九州の親戚・正和」が、

「源太君、ここから我々が
宿泊するホテルまでは、
どれくらいの時間がかかるかな?」

と、私演じる「源太」に聞いてきたので、

「源太」は、

「車で10分かかるか、
かからないかってところですね。」

と答えるはずだったのに、

あろうことか私は、

「車で10分」を「車で2時間」

と言ってしまう!

言った瞬間、

「あっ!違った!」と思い、

すぐさま

「2時間・・・いや違うな・・・10分ですね。」

とサラリと付け加えたが、

客席から笑いが起こってしまい、
「あちゃー」となる。

その後、幸いにして芝居は
何事もなかったかのように
続いたので良かったけれど、

「親戚が宿泊するホテルが
葬儀場から車で2時間も掛かるところを
予約するなんて、どんなんやねん!」

「もっと近くにホテルはなかったんかい!」

と心の中で一人で突っ込み、
猛省する私。

するとおかしなもので、
こういった言い間違いのミスは
連鎖するもので、

今度は広瀬さん演じる「正和」が、
この次の場面で、葬儀場のある
「日本ライン今渡」という駅名を言うところで、

「日本ライン」を「日本平」と口走り、
そこで完全にセリフが止まってしまう・・・。

そのまま言い直せば済むような
場面だけど、こうなると頭が
真っ白になるので、
正しい駅名なんて出て来やしないもので、
へんな間ができる。

しかし共演者が間髪入れず

「日本ライン今渡駅」

って言い直したので、ここも
事なきを得たが、
おそらく広瀬さんにとって、
その数秒の間が、何時間にも感じただろう。

あとで広瀬が言っていたけれど、

「なんで日本平なんて
言っちゃったんだろうなぁー
(静岡の)日本平なんて
行ったこともないのになぁー」

と言っていたけれど・・・

私の「2時間」もそうだけど、
こういうことって稀にあるんだよね・・・
口が勝手にしゃべるのって。

もちろん、そのあとは気持ちを切り替え、
私も広瀬さんも、最後までちゃんと
演じ切ったけれど・・・。

こんな2人のミスはあったけれど、
それ以外は全体を通してもミスはなく、

ラストシーンを迎えると、
客席から涙を拭う音が、
あちらこちらから聞こえてきて、
ドライアイスももちろん上手くいって、
感動的なエンディングとともに
無事初日を終えることが出来、

その後、2日目の昼夜、
そして千秋楽では、
もちろん同じミスはせず、
他のメンバーも堂々と演じて、
毎回、毎回、客席から
大きな拍手と声援をいただき、

涙と笑いと感動がいっぱいの

「ありがとう、お父さん」は、

大成功で幕を下ろすことができた。

終演後、
お客様へのご挨拶の為ロビーに伺うと、
様々なお客様が私の元に来られて、

「私の主人の葬儀を出した際、
あんなので良かったのかな・・・って
ずっと思っていたのですが、
主人が『ありがとう』って
言ってくれているように思え、
心のつかえが取れました。」

とおっしゃって下さる方や、

「先の震災で両親を亡くし、
自分も半身不随になり、
生きる勇気を失いかけていたのですが、
今日のお芝居を観て、両親が
励ましてくれているように思えました!」

と私の手をしっかり握り、
涙を浮かべて言って下さる方もいらして、

他にも

「前向きに生きてみる希望が湧いてきた」

ということ等を直接言って下さる方もいた。

とにかく、今回は
ロビーでいつも以上に沢山のお客様が
声を掛けてくださった。

実は、この脚本を描いた時、
正直なところ、すごく不安だった。

特に派手な演出もなく、
淡々と物語が進行していくので、
お客様が飽きてこないかな?とか、
身内を亡くした方が身近にいない人は
つまらないんじゃないだろうか?

等々思ったけれど、

いざ蓋を開けてみたら、
圧倒的に感動してくださる
お客様が多くて驚いた。

身内を亡くされた方は
その方を思い出し、また身内で
亡くなられた方がいないお客様も、

「両親を大切にしようと思った」

「今夜、田舎にいる父に
電話で話がしたくなりました。」

等々言っていただく方がほとんどで、

劇団ふぁんハウスの新たなる
スタイルが確立した事を実感し、
ホッとした気持ちで公演を
終えることができた。

私は感じなかったけれど、
音声ガイド操作をおこなっていた

長女の美岐(平野美岐)や、
長男の恒士郎(平野恒士郎)、
そして実際に孫の役で出演していた
次女の美和(平野美和)は、

「おじいちゃんが来ている!」

っていうのを、
ラストシーンで強く感じたそうで、

他の共演者も

「写真しか知らないのに・・・」

と付け加えながら、
私の父がいる気配を
強く感じた瞬間があったと言う。

そんな話を聞くと、本当にひょっとしたら、
観に来てくれていたのかもしれないなぁー
って思う。

ありがたいことに、

1月18日(土)、
板橋区立文化会館にて
「ありがとう、お父さん」を
再演する事が決定した。
(午後2時、午後6時の2回公演の予定)

反省点を踏まえて、
来年の板橋公演では脚本も変更し、
新メンバーを加え、
今回以上にグレードアップした

「ありがとう、お父さん」

を皆様にお届けできればと思います。

「夢」「希望」「勇気」!

これからも劇団ふぁんハウスを、
末永くご贔屓によろしくお願い申し上げます。

終わり