Page22 – 「ありがとう、お父さん in 板橋・本番当日」


1月18日(土)「本番当日」

これまで劇団ふぁんハウスは、
公演初日の朝、最寄り神社へ
「成功祈願」に行っていたのだが、
今回はやらないことにした。

・・・というのも、
本番当日のこの日は、
朝10時からゲネプロといって
何もかも本番通りの
リハーサルをおこない、

その2時間後には昼公演、
昼公演を終えた更に2時間後には
夜公演という・・・

つまり1日のうちに約2時間の芝居を
3回もおこなわねばならないという
超ハードスケジュール!

それなのに、寒い朝、
楽屋入りの1時間前に集合して、

劇場前→神社→劇場

と歩くというのは、
かなりの体力を消耗するのは必至。

だから、ここは思い切って
これまでの風習である
「神社詣り」は
今回、やめる事にしたのだ。

ただ、これまでずっと
「神社での成功祈願」をおこなって
公演が成功していただけに、
まったく何もやらないというのも
どうかな?と思ったので、

午前9時の楽屋入り後、
普段は劇団倉庫に祀ってある、
お社の形をしたケースに入った
「明治神宮」のお札を舞台中央に飾り、
その「神様」を全員で取り囲んで、
鈴木千秋の祝詞に合わせ、

「二礼二拍手一礼」という
神事に則り「成功」を祈った。

そしてメイクをして衣裳に着替え、
気を引き締めてゲネプロ開始。

昨日の「場当たり」の結果は
出るだろうか?
役者達はちゃんと演じる事が
できるだろうか?

芝居のすべてを客席から観て、
最終チェックしたいところだが、
私は役者でもあるのでそれは無理。

各スタッフさんを信じて、
極力役者に専念しつつ、
ゲネプロで「源太」を演じた。

全体的に大きなミスはなかったけれど、
たかだか300名収容の小劇場なのに、
何を言っているのか?セリフの
聞こえない役者が数名もいた。

その役者達は、
稽古場の時もそうだったので、
決して声をセーブしているのではない・・

そこで
「エネルギーがない!声を出す!」

と、ゲネプロで出すような
レベルじゃないダメを出し、
ゲネプロは終了。

あとはもう本番を待つばかり。
昼ご飯を食べて、メイクをし直し、
なんじゃ、かんじゃと言っていると、
もう開場時間!

舞台監督の高橋さんの
「客入れしまーす」の合図とともに
モニター画面に目をやれば、
待ってましたとばかりに
続々とお越しになるお客様の姿が
映し出され、
あれよ、あれよという間に
ほぼ満席状態。

開演5分前、
緞帳幕の中に集合し、

円陣を組んで

「いくぞー」「おー!」

のかけ声とともに、
各自が上手(かみて)下手(しもて)の
袖にスタンバイ!

ボイス・エマノンさんの場内アナウンスが流れ、
本ベルが劇場内に鳴り響き、
アマティーのピアノ演奏が始まると、
出演者全員の緊張はマックスに!

でもね、
薄暗い袖でスタンバイしている
みんなはいい顔をしているのだよ。

そしてテーマ曲が終わって、
効果音の中、
ゆっくりと緞帳幕が上がり、

「ありがとう、お父さん in 板橋」

は始まった。

芝居が進むにつれ、
お客様の反応がダイレクトに伝わり、
時には笑い声も聞こえてきて、
役者はますます乗ってくる。

終盤、涙を拭うお客様の様子が
舞台上にいてもよく分かり、
エンディングでは
大きな拍手がわき起こり、
まずは初日が成功した事を確信するが、
ここで油断してはいけない。

夜の部も残っている。

皆様からちょうだいした
楽屋見舞いの差し入れをいただきながら、
英気を養っていると、
時間というのは、あっという間に
過ぎ去るもので、
またまた大勢のお客様がお越しの中、
夜の部が始まった。

「みんな、どうか、どうか
緊張感を継続して、最後まで集中して、
いい芝居を夜の部のお客様にも
お見せしてくれよ!」

と願いながら、私自身、
役者として全神経を集中しながら
みんなの芝居を見ていると、

前日の早朝から、メチャメチャハードな
スケジュールであったにもかかわらず、
疲れから来る集中力欠如なんてどこ吹く風、
とってもエネルギッシュに、
最高の芝居を披露して、
素敵な仲間達は、
最後までキラキラと輝き続けていた。

そして感動的なエンディングを迎え、
芝居が終わり、ゆっくりと
照明がフェードアウトしていくと、
客席からは万来の拍手と、お客様の笑顔!!

「よっしゃ!」

私は心の中で小さく叫んだ。

一度、暗転になったステージに
再び明かりが入り、カーテンコール。

安堵の気持ちで
ステージから向かって客席の
右手一番後ろに目をやれば、

音声ガイド操作をしていた
美岐(平野美岐)のテーブルに
立てかけている親父の遺影が、
にっこり微笑んでいるのが
よーく分かった。

そういえば、
この作品に携わっている間、
親父はいつも私のそばにいてくれた。
色々な困難も、
乗り越える力を与えてくれた。

「ありがとう、お父さん」

という作品とは、
しばらくお別れになるけれど、
また、いつか、
きっと再演できればと思う。

その時は親父、
またよろしくたのむで。

こんな素敵な作品を創らせてくれた
大好きな親父へ、
心を込めて、大きな声で叫びたい!

「ありがとう、お父さん!」
「ありがとうーお父さん!」
「ほんまに、ありがとーーー!!!」
「会いたいよー!おとうさーん!」

今回も
劇団ふぁんハウス公演へお越しいただきました
多くの皆様、そしていつも応援してくださっている
関係者の皆様、本当にありがとうございました。

劇団ふぁんハウスは、
まだまだ走り続けて参ります。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。

劇団ふぁんハウス 代表 平野恒雄