Page1 – 「ありがとう、おとうさん」


2月3日(日) 「ありがとう、おとうさん」

新春公演が終わり、早1か月になる。
この1か月、芝居の稽古はお休みをしていた。

しかし、お休みしていたのは稽古だけで、
制作的な活動はずっと継続をしていて、
なんだかんだ言いながら毎週末は劇団メンバーと顔を合わせ、
15周年記念公演に向けての打ち合わせをおこなっていた。

その記念公演「ありがとう、お父さん」

の稽古が、昨日(2月2日)より始まった。

作品の内容は、昨年私の父が亡くなった時、
「喪主様」として私が体験した様々な出来事を、
劇団ふぁんハウス風にアレンジをしたもの。

そうあれは・・・1年前の2月11日。
私は大阪のホテルで開催されていた中学校の同窓会に出席していた。

その1次会が終了し、みんなで、

「2次会会場に移動するかぁーっ」

という時、岐阜県で父と同居する弟から
電話が入る。

弟の奥さんの携帯だったけど
掛けてきたのは弟で、
その時点で「何かあったな!」と直感する。

その内容は、案の定

「おやじが倒れた!」

「意識はない」

「もうダメだと思う・・」

という、とてもショッキングなものだった。

周りでは、久しぶりに再会した同級生達が、
とても楽しげにほろ酔い気分で

「さぁー2次会行くぞー」

と盛り上がっているので、

とてもとても

「親父が亡くなった・・・」

なんて言えるはずもなく、
2次会に出られなくなった理由を

「仕事が入った」

と告げ、最大限の作り笑顔で、
懐かしき友達と、また再会することを
誓いながら、会場の真下にある
大阪駅から電車に飛び乗り、
新幹線、名鉄電車と乗り継ぐ。

新幹線の中で、弟から

「いま・・息を引き取りました」

というメールが来た時は、
何から考えていいやらまったく分からず、
一刻も早く駆け付けたいって気持ちと、
現実を受け入れたくないから、
いつまでも電車に乗っていたいって
気持ちが交差し、様々な事を
考えているようで、
何も考えられないまま病院で父と対面。

できることならば、
いつまでもこの静かな病室で、
父と一緒にいたかったけれど、そうはいかない。

気持ちを切り替え、葬儀社の手配から始まり、
悲しんでいる暇もなく、あれやこれやと、
ドタバタしながら、お通夜、葬儀を終え、
その後も役所に行って、
様々な手続きなどおこない、
約5日ぶりに東京に戻り、翌日から仕事に復帰するが・・・
普段通りには振舞うことは難しい。

それでも現実の暮らしはあるわけで、
やるべき仕事をこなし、
劇団活動もなんとかこなしながら、
「何事もなかったかのような日常」を
ようやく取り戻せるようになったのは、
葬儀を終えて1か月経った3月のことだった。

それから時間を見つけてパソコンを開き、
途中まで書いていた、2013年の夏に開催する
作品の脚本の執筆にも取り掛ろうとしたが、
頭に思い浮かぶのは、父との想い出や、
1か月前の葬儀のことばかりで、
なかなか筆が進まない。

こんな状態では、
とてもではないが創作なんてできやしない。

「よし!こうなったら、おやじが亡くなった時から、
葬儀が終わるまでの出来事を書こう!」

と思い付き、半分くらい書いていた脚本をボツにして、
父の葬儀の様子をもとに、
まったく違った内容の脚本を書いてみると、
ありゃ不思議!?
次から、次へとアイディアが浮かび、
筆(キーボード)が進む!

そこで、その月(去年の3月)から
また新たなる脚本を書き始め、
その後も時間を見つけては書き続け、
去年の11月に第一稿が完成、
そして「夏の夜空へ in 板橋」の本番を挟み、
推敲を重ね、先日の1月30日に完成したのが、
今回の「ありがとう、お父さん」なのだ。

しかし読み返してみると、
大ドンデン返しはないし、派手なシーンもない・・・
おまけに役者の衣裳は、全員喪服で地味だし・・・
段々不安になってくる。

完成した瞬間は、

「これはきっと、おとうさんから
俺への最後の贈り物なんだ!」

って思って意気揚々としていたけれど、
読めば読むほど、私の個人的な感情ばかりが
目について、物語にも何もならないような気がしてきた。

しかし、だからと言って、
もう書き直す時間もない。
しょうがないから、そのままの状態で、
とりあえず完成した仮・台本を、
昨日、みんなに配り、
初見ではあるが、早速、
新作の「読み合わせ」をおこなってみた。

まずは私がイメージしていた役を
それぞれのメンバーに読んでもらいながら、
物語は進行していくのだが、
セリフを言っている役者の顔が、
どの顔もあまり面白そうじゃない。

そんな苦虫を噛みつぶしたような顔をする
メンバーを盗み見る度に、

「あーやっぱり今回の作品はだめか・・・」

とドンドン落ち込んでいく。

約2時間掛けて、
最後まで読み終えたところで、

みんなに「

ど・・・どうかな?」

と恐る恐る感想を伺うと、

「いいじゃないですか!」
「派手さはないけど、じんわり感動します」

などなど、言ってくれる!

「えっ?そうなの?
お世辞は言わないでいいから・・・」

と言っても、

「お葬式なんだけど、
つい、笑ってしまうシーンもあり、
それでも最後はじんわりきました」

と、どうやら合格点を貰えたようで、
ホッと、胸をなでおろす。

苦虫を噛みつぶしたような顔をしていたのは、
ほら、みんな初見なのに、
いきなり「キャスティングオーディション」も兼ねた
読み合わせだったからみたいで、
緊張して「真剣」に脚本と向き合っていたから
だったらしい。(ホッ!)

これから、
男の役を女に変えなきゃいけないし、
大幅なスリム化もおこなわなきゃいけないけれど、

「亡き最愛の父・平野耕一に捧ぐ」

ってことで、いつも以上の気合を入れようと
思う平野恒雄でありました。

戻る