Page9–「幻のシーン」


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PDF 団長の独り言 2015.04.19

4月19日(日) 「幻のシーン」

「ようこそ!これからの青春」は、

約17年前、設立したばかりの頃の
劇団ふぁんハウスでの珍事件を元に描いた、
フィクションだけどノンフィクション 的な
要素をふんだんに盛り込んだ作品なので、

「そういえば、
そんなこともあったよなぁー」
「あの時は、愕然としたよなぁー」
「精神的にきつかったなぁー」等、

皆さんの芝居を観ていて、
つい感情移入してしまう。

その昔、
今じゃー考えられないような「珍事件」がね・・
ええ・・稽古中、結構あったんですよ。

今でこそ笑い話になるけれど、
あの頃は「もう辞めた!」って、
何度思ったことか・・・。

それでも公演が終わる度に、お客様から

「ありがとう!」
「感動した!」
「元気になれた!」

という感想を頂戴し、

「また観たい!」
と言っていただいたその言葉と、

「次回もやりましょう!」
って 言ってくれた、その時その時の
メンバー達が私の背中を押してくれたおかげで、
「平野恒雄の信念」を曲げることなく、
ここまで続けてこられたように思う。

ただ、この「ようこそ!これからの青春」は、
あくまでも「ドラマ」として描いた脚本なので、

事実に基づいたセリフもあるけれど、
話の核となるシーンやクライマックスは、
完全なフィクションなので、
かなりドラマチックになっているんですがね・・・。

そのドラマの中に劇中劇がある。

番松さん(番藤松五郎)演じる
「平山さん」が「劇団希望」という
架空の劇団を設立して、
最初に上演する作品が、
「ありがとう、お父さんなのだ。

「あれ?このタ イトルは!」と思われた方!
そうなのです。

2年前に上演した
劇団ふぁんハウス公演の作品を
劇中劇として使用しているのです。

なぜ「ありがとう、お父さん」を
選んだのかといえば、実はこれも、
劇団ふぁんハウスマニアの方ならば
よくご存知かと思うが、

初演の「ありがとう、お父さん」は
大成功のうちに幕を下ろし、
追加公演として、翌年の1月に
板橋公演として上演する事が決まり、
脚本やキャストも新たに稽古を開始し、

あと1ヶ月で本番だぞ!というその時、
主役の「お父さん」を演じる予定だった
ヒデさん(三田秀)が足を複雑骨折してしまい、
なんと降板!

「さぁ!どうする!」

という事態になり、
ヒデさんを見舞った帰り道、
私は脚本を変更前の初演と
同じモノに戻すことを決意し、

ヒデさんが演じる予定だった
「お父さん」は番松さんに、
そして番松さんが演じる予定だった
「田原」という追加公演の脚本で
新たに登場する役は、無くしてしまう!
という荒治療を施し、板橋公演は成功した。

しかし、カットをしてしまった
本来番松さんが演じる予定だった
「田原」と、ヒデさんが演じる
予定だった「お父さん」との
ラストシーンを、
私はすっごく気に入っていたので、
ヒデさんが降板する事で、
そこのシーンを闇に葬るのが
すごく悔しくて惜しくて・・・

いつか必ず、
「幻のシーンを復活させるぞ!」との
想いをずっと抱いていた。

だから、今回の
「ようこそ!これからの青春」の
脚本を執筆するにあたり、
まず「このシーンありき!」
で描き始めた。

本当は物語の中には、
なくてもいいシーンって言えば、
なくてもいいシーンなのだけど、

どうしても

「幻のシーンをヒデさんと
番松さんに演じてもらいたい!」

との想いがあったので、今回はお二人が
この幻のシーンを演じていただくようにと
キャスティングをしたら!

なんとヒデさん、
骨折をした足の具合があまり
よろしくないという事で、

「数ヶ月間、
車椅子での生活を行うように!」

と医者から告げられた・・・。

そして

「車椅子では芝居にならないですし・・・
すみません・・」

という涙ながらの降板の申し出が、
実はヒデさんからあったのだ。

しかし、できることならば、
やっぱり参加してもらいたい!

そこで、

「やる気があるのならば、
ヒデさん演じる『岡村』は
車椅子って設定にするよ!」

と提案してみる。

するとヒデさんは、
ものすごく気合の入った声で、

「あ、ありがとうございます!」
「頑張ります!」
と言ってくれたので、
ヒデさんは車椅子俳優として、
デビューすることになった。

劇団ふぁんハウスの歴史の中で、
車椅子ユーザーが大活躍した
作品は何度もあったわけだし、
「熱意」と「やる気」さえあれば、
どんな困難もハンディも乗り越えて、
お客様に楽しんでいただける
芝居を行えるというのは証明済み!

そんなヒデさんと、番松さんの
「幻のシーン」も、
お芝居の楽しみのひとつに
加えていただければと思います。