Page18–「魔物が棲む舞台」


印刷用『団長の独り言』PDFファイル(A4サイズ)
↓ こちらからダウンロードできます。
PDF 団長の独り言 2015.05.30

5月30日(土) 「魔物が棲む舞台」

アマティーが演奏するピアノの
オープニング曲で、幕が上がった。

私は番松さんとともに、
みなの先陣を切っての登場。

舞台上の私からは
まったく客席は見えないので、
数時間前に行ったゲネプロと
状態は同じなんだけど、

いやいや!このシーンと静まり返って、
私からは暗闇にしか見えない客席には、
何百人ものお客様がご覧になっているのだよ。

そんなことを肌で感じつつ、
私は「大山健太」となり、
稽古場でやった通り集中して演じ始める。

やがて場面が変わり、
次から次へと共演者達が登場してくると、
舞台上は華やかになり、
そこから、勢いでグングンと芝居は進み、
特に大きなミスもなく、
全員が一丸となり盛り上げて、
フィナーレの歌では、
客席から手拍子が湧いてきて、
お客様も楽しんでいただけた
様子が伝わってくる。

カーテンコールでご挨拶をしている最中も、
お客様の温かい雰囲気を感じることが出来、
無事初日の幕を降ろすことができたのだが、
しかしどうだろう?本当にこんな脚本で
受け入れていただけたのだろうか?と

ややビクビクしつつ、
それでも腹をくくってロビーに
お客様へのご挨拶に伺えば、

「すっごくよかった!」
「楽しかった!」

「今までとは違った味が出ていて、
またそれも感動した!」

などの声、声、声!

書いていただいたアンケートを読んでも、
どれもこれもいい感じ。

ここでようやく、私の脚本が
今回も受け入れていただけたーと実感し、
安堵の気持ちで来るべき2日目を迎える。

午前10時、全体集合。
それにしても、体のあちこちがだるいが、
初日は成功した!という安堵感が、
なんとも心地よい。

しかし気持ちを切り替えなきゃいかん!

己に気合を入れ、メンバー達にもくれぐれも、

「2日目芝居にならないように!」

と、口を酸っぱくして告げ、
前日の初日、客席の一番後ろの
音声ガイドブースから冷静な目で
芝居を見ていた美和の「なるほどなぁー」
という「ダメだし」を元に、

声、動き、などの調整を行って、
2日目の幕開きを待つ。

(2日目芝居・・・初日は完成度はともかく、
必死になって行うので、意外と好評な場合が多いのだが、
その分2日目は、初日の緊張感から解放され、
知らず知らずのうちについ気を抜いてしまい、
結果、ミスを犯してしまうことを2日目芝居という)

土曜日の午後、初夏を思わせるほどの暑さの中、
大勢のお客様で、会場は埋め尽くされる。

いつものように本番5分前、
緞帳幕の内側に全員集合し、
「いくぞ!おー!」で、
それぞれが所定の位置につき、
やがて2回目の公演が幕を開けた。

出だしからみな好調、
セリフのミスもない!テンポもいい!

「こりゃーいけるぞ!」

と思った後半、魔物はやはり棲んでいた。

「出とちり」と言って、
いなきゃいけないはずの役者が、
出番を勘違いして、
楽屋でホッと一息ついていたがために、
スタンバイが遅れる!

しかも連鎖反応のように、
出とちりが立て続けに3人も続く・・・。

幸いにして、ほとんどのお客様には
分からなかったそうなのだが、
もう私の腹わたは煮えくり返っている!

この日、「中打ち上げ」と言って、
受付スタッフさん、舞台スタッフさんも
交えての「親睦を深める会」を開く予定だったのだが、
とてもとても、酒を飲んで、騒ぐ心境ではない。

終演後、全員舞台に集合をかけ、
かなり厳しい言葉で全員に活を入れ、
この日は「中打ち上げ」を中止にして、
私はとっとと劇場を後にしようとしたが、

受付リーダーの小路さんが、

「受付スタッフは、役者さんとの
飲み会を楽しみにしていたので、
団長、なんとか中打ち上げを
やっていただけないでしょうか?」
と涙目で私に訴える。

確かにそうだよな・・受付スタッフの方が、
玄関を支えてくださっているからこそ、
我々は伸び伸びと演じることができるわけだし、

やはり皆様に感謝の意を込めて、
そういったコミュニケーションの場を、
役者のミスのために無くすわけにはいかない。

その日のアンケートを見ても、
どうやら、お客様は初日以上に
感動してくださっている。

そういえば、お見送りの際も
皆さん、大変喜んでくださっていた。

何はともあれ「成功」したのだし、
みんなにも気持ちを切り替えてもらうためにも、
この日は、和気藹々の「中打ち上げ」を行い、
普段なかなかお話ができない
受付スタッフの皆様や、
照明、音響、舞台監督さん達と、
大いに盛り上がり、
「明日の千秋楽は完璧に!」と、
皆、大声で誓ったのでした。